文法編 / 第2章 原因・理由・目的 / クエスト 5
〜手前
「〜した以上、人の目があるのでやめられない」。体面が理由になる表現。
導入
場面:同僚の前で禁煙を宣言した人
みんなの前で禁煙すると宣言した手前、もう吸うわけにはいかない。
意味
〜した以上、人の目があるので 〜しないと格好がつかない。体面・面子(人にどう見られるか)が理由になる。
接続
| 付き方 | 例 |
|---|---|
| 動詞(辞書形/た形)+ 手前 | 引き受けた手前/お世話になっている手前 |
| 名詞+の+ 手前 | 子どもの手前/世間の手前 |
⚠️ 体面・面子が理由になっている。後ろには「〜ないわけにはいかない」「〜ざるを得ない」のような「仕方なくする」表現が来ることが多い。
例文
- 自分から誘った手前、今さら行きたくないとは言えない。 日常の場面
- 子どもの手前、親としてけんかするわけにはいかなかった。 家族・人の様子
- 大きなことを言って契約を取った手前、失敗するわけにはいかない。 ビジネス
使い分け — 「〜した以上」の仲間たち
| ニュアンス | ここが違う | |
|---|---|---|
| 〜手前 | 人の目があるので格好がつかない | 体面・面子が理由 |
| 〜以上(は) | 〜したのだから当然 | 体面に限らない義務・責任 |
| 〜からには | 〜するのだから必ず | 話し手の決意を言うことが多い |
| 〜ばこそ | 〜だからこそ | 積極的な理由。仕方なくではない |
ミニ問題
3問 — 正しいものを選ぼう
Q1みんなの前でやると言った( )、今さらやめるわけにはいかない。
正解:手前 — 「人の前で言った以上、やめたら格好がつかない」という体面の理由。「そばから」は繰り返し、「が早いか」は「するとすぐ」で、意味が合わない。
Q2部下の( )、弱音を吐くわけにはいかない。
正解:手前 — 名詞+の+手前。「部下に見られているので格好がつかない」。「かたわら」は「〜する一方で」、「を限りに」は「〜を最後に」で、意味が合わない。
Q3「手前」の使い方が正しい文はどれ?
正解:約束した手前、行かないわけにはいかない — 「手前」の後ろには「仕方なくする」という表現が来る。体面が理由なのに「やめた」と続けるのは不自然。